正直、期待なんてしてなかった。
「プロフィール写真、アニメのアイコンて。」
マッチングアプリの通知をぼんやり見ていたとき、彼からの「話してみませんか?」というメッセージが届いた。
仕事終わりで疲れていたのに、なぜか返信した。
やりとりは妙に丁寧で、でもちょっとズレてて可笑しくて、気づけばLINE交換していた。
金曜の夜、新宿のちょっと外れたカフェ。初対面の彼はスーツ姿で、眼鏡の奥に優しげな目をしていた。少し猫背で、しゃべるときはいつも緊張しているのが伝わってきた。でも、その誠実さが逆に心地よかった。
終電が近づく頃、「このあと、どうしますか?」と聞かれた。
私も少し酔っていたし、なんとなく「うん」と頷いた。彼の手は震えていたけど、ぎゅっと握ったときの力加減がちょうどよくて、思わず笑ってしまった。
ホテルの部屋。

ドアが閉まると、さっきまでの緊張が溶けたように、彼が私を強く抱きしめた。
スーツのネクタイをほどきながら、ぎこちないキス。でも、唇が触れるたび、彼の中の何かが変わっていくのがわかった。
「触ってもいいですか?」って、そんなふうに聞く人初めてで。
私が「うん」って囁いた瞬間、彼の手がゆっくりと私の太ももをなぞっていった。
彼の指は、まるで未知のエリアを探検するみたいに、おそるおそる、でも一生懸命だった。
タイツを脱がせるときも、まるで宝物でも扱うかのように丁寧で、そんな彼が可愛くて、ちょっといじめたくなった。
「え、そこは……っ」
耳を甘く噛んだだけでびくっと反応する彼。
その反応が面白くて、彼のスーツのボタンをひとつずつ外しながら、舌で胸筋を撫でたら、彼が小さく喘いだ。サラリーマンなのに、反応が乙女で笑いそうになった。
でも、彼がスイッチ入ると、急に豹変して──
下着をずらした瞬間、あの奥手そうな男が、私の脚を強引に割って、ぐっと腰を押し付けてきた。
「もう、我慢できない…」
その声、普段の彼からは想像もできないほど低くて、熱くて、私の奥をくすぐった。
身体が交わるたび、彼の吐息が耳元に落ちてくる。
オタクで不器用な彼のくせに、リズムはやけに合って、私の敏感なところを正確に責めてきて……
正直、悔しいくらい気持ちよかった。
気づけば何度もいかされて、終わった後は汗だくで、彼の胸の中に顔を埋めた。
「…また、会ってくれますか?」
彼がそう囁いたとき、私は軽くキスを返して「考えておく」って笑った。
きっともう会わない。
でも、あの夜の彼の熱さだけは、しばらく私の身体から消えそうにない──
